当たり

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「暑い~」 汗で濡れたセーラー服でパタパタと扇いでいる彼女。 「ほれ」 俺も食べながら、もう一本のアイスを彼女に渡す。 「ありがと~」 驚きつつも、彼女はすぐに笑顔になる。 だが、俺は知っている。 この後、彼女はもっと笑顔になることを。 なぜなら、そのアイスは必ず『当たり』だから。 いや、当たりに"なる"から。 天狐の末裔たる彼女は、昔から不思議な力を使えた。 が、本人に自覚が全くないので、悪いことには使えない。 おかげで、徒人には見えない狐のお面と同じく、ほとんどの人には『運の良い子』という印象で終わる。 「あ、やった~当たりだよ♪」 ちょうど食べ終えて、嬉しそうに『当たり』と書かれたアイスの棒を見せてきた。 「じゃあ、交換しに行こっか、安倍さん」 「うん」 喜ぶ彼女に対し、猫が少し警戒を始めた。 やれやれ、彼女が力に目覚めるまで、俺の仕事は終わらないらしい。
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