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佐久間の自宅に着くと、前回同様、クッキーが玄関で二人を出迎えてくれる。
「クッキー!」
目を輝かせる遥と、はち切れんばかりに尻尾を振るクッキー。
相思相愛の一人と一匹を見て、佐久間が苦笑した。
「飲み物持ってくから、クッキーと部屋行ってて。」
「うん、お邪魔します。」
遥とクッキーがじゃれあいながら部屋に向かう。
「瀬能ー。シュークリーム好き?」
紅茶とシュークリームを載せたお盆を手に、佐久間が部屋に入る。
「うん。好き。」
間髪入れずに即答した遥の目が、輝いている。
ちくしょう…。好き、とかって…俺も言われたい…。
「……召し上がれ。」
「いただきます。」
遥を素直にさせる、クッキーと甘味が恨めしい。
「あ、そうだ。瀬能、これ。」
いいながら、鞄から出した写真を遥に差し出す。
淡い群青の、紫陽花の写真だ。
花びらに無数の水滴がついて、陽の光でキラキラと多様色に反射している。
雨上がりの、清々しさを感じさせる一枚だ。
「わー。本当に撮ってくれたんだ。」
遥が嬉しそうな声を上げる。
思っていた通り、佐久間の撮った写真は綺麗で感動する。
自分で撮ったものとは、雲泥の差だ。
「今日の昼休みに撮ったヤツ。」
「ありがとう。」
「どーいたしまして。」
渡した写真を嬉しそうに眺める遥に、佐久間も自然と笑顔になる。
さて、飴はたっぷりばらまいたし、次は鞭の時間かな。
ご機嫌でシュークリームを頬張る遥に、佐久間がやや不穏な笑みを浮かべた。
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