背中だけ

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「いろいろ。俺、瀬能のこと良く知らないから。」 「そんなん、知ってどうすんの?オレだって佐久間のこと全然知らないし、お互い様で良いじゃん。」 「俺は、瀬能のこと知りたいんだけど。」 佐久間に正面からじっと見つめられ、なぜか視線がそらせなくなった。 「べ、別に知らなくても、写真が撮れれば良いだろ?」 「撮れれば何でも良い訳じゃないんだけど。」 佐久間の声のトーンが少し低くなった。 たったそれだけのことなのに、圧迫感を覚えた。 写真に関しては、真面目な顔するんだ。 「いや、そういう意味で言ったんじゃない。最初から、写真苦手だって言っただろ。」 軽んじたわけではなく、本当に、苦手なのだ。 「それは知ってるけど、このままじゃ、毛逆立てた猫の写真しか撮れないんだよね。もうちょっと俺になついてもらわないと。」 「…誰が猫で、誰になつくって?」 今度は逆に、遥の声が低くなる。 「まぁまぁ、雰囲気作りだからさ、協力してよ。お願い。瀬能。」 そして、いつもの笑顔。 「この話の流れで、オレが頷くとでも思ってんのか?」 「うん。だって、男に二言は無いんでしょ?オススメのケーキバイキングにも連れてくから、お願い。瀬能。」 完全に昼休みと同じパターンだ。 こっちが折れるまで、終わらない。
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