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「はぁ~。」
観念して顔を上げると、余裕たっぷりな佐久間の笑顔。
「分かった。」
「サンキュー瀬能。」
「…ムカつく。」
仏頂面も睨みも拒否も、何一つ通じない。
さっさと満足の行く写真を撮らせて、去ってもらうのが賢明だ。
「じゃあ、明日からよろしく。あ、瀬能、土曜日空いてる?家の近所のケーキハイキング行かない?結構ウマイらしいよ。」
「…え?」
「そんなに身構えないでよ。多分またごねるだろうと思って、さっきまでこの辺のうまいケーキ屋探してたんだよね。」
それでこの時間まで残ってたのか。
根回しの良さと展開の早さに、圧倒される。
佐久間の言動に振り回され、さらにこっちの内情を見透かされているようで腹が立つ。
「別に、ごねてる訳じゃない。」
ふんっ、と佐久間から顔を背ける。
「そう?」
拗ねてる。おもしれー。
込み上げる笑いを、佐久間は何とか堪えた。
「じゃあ行こうよ。土曜日ケーキ。」
「…分かった。」
「よし。んじゃ、瀬能、連絡先教えて。時間と場所後で連絡するから。」
「……。」
佐久間の思うがままなのが、本当に腹立たしい。
「ほら、早く。」
「くそムカつく。」
ぼそりと呟いて、遥はスマホを取り出した。
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