背中だけ

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土曜日の空には、重苦しい雲が広がっていた。 美術室で話して以来、佐久間はやたらと遥に絡んでくるようになった。 昼休みも当然のように遥の隣に座り、健吾も交えて下らない話で勝手に盛り上がる。 自分だけでなく佐久間も同じ電車通学だと知ったのも、有言実行で一緒に帰ってからだ。 遥が、満員電車には乗りたくないからいつも時間をずらして乗っていると言うと、「瀬能に合わせるからいいよ」とあっさりと頷かれた。 さらに、遥が嫌がらせでわざと美術室に長居したときも、嫌な顔一つせずに黙って遥の帰りを待っていた。 そうまでされると、逆に「良い雰囲気」とやらを出さねばならないような、妙なプレッシャーを感じてしまう。 「どうしろって言うんだよ。」 こんなことなら、逆に指示されたポーズに黙って従っていた方が楽な気がする。 「あれ?」 どっちの角曲がるんだっけ?
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