背中だけ

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「瀬能、大丈夫?」 「大丈夫?って何だよ。あんなの別に、佐久間じゃなくても追い払えるんだけど。」 「へー。撃退の邪魔してすいませんねー。」 悪びれた様子など微塵もない口調。 「何で佐久間がここにいんだよ?」 「何でって、ちょっ、瀬能、どこ行くの?」 元来た道を戻ろうとする遥に、佐久間が慌てて制止の声をあげた。 「え?だって、この先は工事中だって…。」 「いや、この先にケーキ屋があるんですけど。」 「……。」 「うーん。瀬能はどうやって追い払うつもりだったのかなー?」 「うるさい。」 白々しい非難を遥が一蹴する。 「まぁいいや、とりあえず、予約してるから早く行かないと。」 「あぁ、うん。」 佐久間に急かされながら、ケーキハイキングは予約が必要なのか…などと考えていると、すぐにそれらしき店が見えてきた。 「げ。」 店を一目見るなり、遥が顔をしかめて声をあげた。 店のターゲットが女性であろうその店は、メルヘンチックで可愛らしい佇まいだった。 完全に気後れしている遥をよそに、佐久間は平然と店に入っていく。 「さ、佐久間っ!」 「ん?どしたの?」 「どしたのって…。男二人で入る店じゃないような気がする。」 「そう?俺は全然気にならないけど。」 何でこいつはこう無神経なのか。 さすがに苛立ちを覚える。 「オレが気になるんだけど。」 「ふーん。瀬能、結構ちっちゃいこと気にするタイプなんだ?まさか、ここまで来て恥ずかしくて店に入れないとか言わないよね?」 「はぁ?誰も入れないなんて言ってねーだろ。」 いちいち言うことがムカつく。 「じゃあ早く、ほら。」
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