背中だけ

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半ば強引に店に連れ込まれ辺りを見回すと、店の外装と違い、店内は落ち着いた内装で少し安心した。 佐久間はさっさとレジで受付をしている。 「あ、佐久間、オレ自分の分は出すから。」 「誘ったのも奢るって言ったのも俺だし。いいよ。瀬能はケーキ見てて。」 「……。」 ここで本当に奢られたら、すごい要求をされそうな気がする。 「何難しい顔してんの?心配しなくても、変なお願いとかしないから。」 「あ、当たり前だ。」 考えを簡単に見透かされて、思わず動揺する。 「はい、トレーと皿。ケーキはあっちね。」 「あ、うん。」 素直に受け取った遥は、ケーキを前にして急に黙りこんだ。 その様子を横から窺って、佐久間は笑いを堪えた。 すげー喜んでる。 これで感情を隠しているつもりなのが、また面白い。 普段は意識して仏頂面を貫いているようだが、ちょっとつつくとすぐに表情が崩れてしまう。 こんなに隙だらけで、大丈夫なんだろうか。 「瀬能ー。先に席行ってるから。」 適当にケーキを1つ選んで、コーヒーをトレー乗せながら声をかける。 「うん。」 返事はあったが、目はすっかりケーキに釘付けである。 あんなに嫌々ながら、モデルを引き受けただけあって、相当なケーキ好きらしい。
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