背中だけ

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「瀬能って、どんな絵書くの?この前は何かリンゴとブドウ描いてたけど。」 「あれは、顧問が気紛れに出す課題テーマ。それさえ提出すれば、あとは自由。」 「ふーん。普段は何描いてんの?」 「んー、風景が多いかな。空とか。」 「空?瀬能、外で空の絵描いてんの?なんか意外。」 「いや、オレ基本的に静かな部屋に籠って描くのが好きだから、スマホで写真撮って、それ見ながら描いてる。」 「瀬能も写真とか撮るんだ。」 「まぁ、撮る技術とか一切無いから、佐久間みたいに上手く撮れないけど、無いよりマシみたいな感じで。」 「瀬能、俺の撮った写真見たことないじゃん。何で上手いとか分かんの?」 「何となく。佐久間の写真はまともなイメージだから。」 「それ以外は?」 「くそムカつく。」 「ひどすぎる。大好きなケーキ屋に連れてきてやったのに。あ、家に空の写真集何冊かあるから、貸そうか?」 「え、いいよ。汚したら悪いし。」 「いいって。帰り寄ってって。あ、でも家、犬飼ってんだけど、瀬能平気?」 「犬!?」 遥の顔が瞬時に輝く。 あぁ、犬好きなのね。分かりやす。 「うん、ゴールデンレトリバー」 「行く。」 即答かよ。 「じゃあ、食べたら行こう。俺はもう食えないから。」 「たった1個しか食ってないじゃん。」 「多分、俺の方が普通だよ。待ってるから、ゆっくり食っていいよ。」 甘いものが苦手な佐久間は、そう言ってコーヒーを口にした。
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