207人が本棚に入れています
本棚に追加
「瀬能って、どんな絵書くの?この前は何かリンゴとブドウ描いてたけど。」
「あれは、顧問が気紛れに出す課題テーマ。それさえ提出すれば、あとは自由。」
「ふーん。普段は何描いてんの?」
「んー、風景が多いかな。空とか。」
「空?瀬能、外で空の絵描いてんの?なんか意外。」
「いや、オレ基本的に静かな部屋に籠って描くのが好きだから、スマホで写真撮って、それ見ながら描いてる。」
「瀬能も写真とか撮るんだ。」
「まぁ、撮る技術とか一切無いから、佐久間みたいに上手く撮れないけど、無いよりマシみたいな感じで。」
「瀬能、俺の撮った写真見たことないじゃん。何で上手いとか分かんの?」
「何となく。佐久間の写真はまともなイメージだから。」
「それ以外は?」
「くそムカつく。」
「ひどすぎる。大好きなケーキ屋に連れてきてやったのに。あ、家に空の写真集何冊かあるから、貸そうか?」
「え、いいよ。汚したら悪いし。」
「いいって。帰り寄ってって。あ、でも家、犬飼ってんだけど、瀬能平気?」
「犬!?」
遥の顔が瞬時に輝く。
あぁ、犬好きなのね。分かりやす。
「うん、ゴールデンレトリバー」
「行く。」
即答かよ。
「じゃあ、食べたら行こう。俺はもう食えないから。」
「たった1個しか食ってないじゃん。」
「多分、俺の方が普通だよ。待ってるから、ゆっくり食っていいよ。」
甘いものが苦手な佐久間は、そう言ってコーヒーを口にした。
最初のコメントを投稿しよう!