背中だけ

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色素の薄い茶色がかった髪は、柔らかい猫っ毛。 小さめな顔には、髪同様色素の薄い茶色の瞳と細い鼻梁、形のいい唇が綺麗に配置されている。 「健吾、今日も部延長すんの?」 ようやく弁当を広げながら、遥が問う。 「ああ、大会が近いし、三年が残ってるのに俺ら二年が先に上がれないだろ。」 「ふーん。じゃあオレも絵完成させるかな。」 「終わったら連絡すっから。」 「分かった。」 「二人はいつも一緒に帰ってんの?」 急に降って湧いた問いに、ギョッとして顔を上げた二人の前には、クラスメイトの佐久間 修が立っていた。 180は優に越えているであろう長身に、甘く端正な顔立ち。 絶えず女子との噂が囁かれている男だ。 「別に、いつもって訳じゃない。」 特別仲が良いと言うわけでもない佐久間に、遥が不審そうに答える。 「へー。あ、昼一緒していい?」 言いながら、そばにある椅子を寄せてくる。 「……。」 「どうぞ。」 黙り込む遥に代わって、健吾が答える。 「どーも。二人はタイプ全然違うけど、仲良いね。」 言いながら、佐久間が購買のパンを口にする。 「……。」 明らかに遥に向けての質問を、だんまりで通す。 「…まぁ、幼馴染みだからな。」 見かねた健吾が、苦笑混じりに答えた。 「あ、そうなんだ。道理で瀬能がなついてるわけだ。」 「なつくって何だよ?」 黙って弁当を食べていた遥が、箸を止めて佐久間を睨んだ。 ようやく顔を上げた遥に、佐久間はにっこりと笑った。 「高野と居るときは、すげーリラックスしてんじゃん。」 「してない。」 「してねーのかよ!ハッキリ言われると傷付くわ。」 仏頂面で即答する遥に、健吾が大袈裟に嘆いて見せる。 「まぁまぁ高野、照れてるだけだろ。」 「健吾相手に照れるか。」 遥のひどい言い草に、ポンポンと健吾の肩を叩いて慰めながら、佐久間が、実はさー、と遥に向き直った。
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