背中だけ

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「終わった?瀬能。」 「わっ…!佐久間。びっくりした。」 後ろから声をかけられ、驚いて振り返る。 「…いつからいたんだ?」 「んー、瀬能が窓から外を見てたときから。」 最初からか。 黙ってじとーっと見つめると、佐久間が意を汲んで苦笑した。 「いやいや、さすがに告白の邪魔はできないでしょう。俺もそこまで野暮じゃないし。」 「まぁ、そうだけど。」 かと言って、一部始終見られて気まずい事この上ない。 二人で帰宅の路につくが、基本、夕闇の中帰るのが常で、空が明るい内に下校するのは初めてだ。 「瀬能さ、最初に聞かれたときに、付き合ってる。って言っちゃえば、話早かったんじゃないの?」 佐久間が、一旦切れた話を蒸し返した。 「興味本位みたいな奴だったら、そうしても良いんだろうけど、必死そうな奴に、適当な事したくないから。」 「瀬能らしいね。」 佐久間が小さく笑って頷く。 「佐久間は、いつもそうやって断ってんの?」 「まぁ、大体ね。そもそも瀬能のみたいに、必死そうに告って来る子もあんまりいないし。付き合ってる人がいるって最初に言えば、俺も振らないで済むし、向こうも振られないで済むから、面倒臭くならない。」 「ふーん。でもその子は、告白も振られもしないで、どうやって佐久間を諦めんの?」 遥が相手の立場になって問うと、佐久間が意外そうな顔をした。 「ん?…瀬能は、相手のそういう所も考えて断ってるんだ?」 「と言うか、諦めてもらわないとオレも困るし。応えられないのに相手の気持ち縛ったら悪いだろ。」 「瀬能は優しいね。俺と違って。」 「別に、佐久間の事批判してる訳じゃないんだけど。」 「うん、分かってる。」 佐久間としても、嫌味で言ったわけではなく、本当にそう思っての言葉だった。 佐久間からすれば、興味の無い相手が自分を好こうが嫌おうが、どうでも良かった。 相手の気持ちの整理に、手を貸す義理はない。 遥の考え方とは、完全に真逆だ。 遥の綺麗で柔らかい雰囲気は、そういう内面から滲み出ているのかもしれない。
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