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シュークリームを食べ終えて、すっかり満足していると、佐久間がおもむろにクッキーを抱き上げた。
「佐久間?」
そして、そのまま部屋の外にクッキーを降ろした。
「クッキー、ちょっとの間ハウスな。あとで散歩連れてってやるから。」
クッキーの頭を撫でながら言い聞かせると、クッキーは名残惜しそうにクゥンと鳴いて、それでも佐久間の指示に従って一階に降りていった。
「佐久間、何でクッキーハウスなんだよ。」
何故急にクッキーを部屋から出したのか、もっと遊びたかった遥が、腑に落ちない表情で聞いた。
「あぁ、クッキーがいると、瀬能が困ると思って。」
「はぁ?何で?」
クッキーに会いに来たと言っても過言じゃないのに。
遥の問いには答えず、ベッドに座った遥の隣に腰掛ける。
佐久間の雰囲気が、いつもと違うような気がした。
何か…不機嫌?
「佐久間さ、いっつも言動に脈絡なくて、オレ訳分かんないんだけど…。」
「俺、基本的に言動は一貫してると思うんだけど。」
「な、何で怒ってんの?」
「分かんない?」
笑みの消えた佐久間の顔に、遥が身を竦める。
「瀬能が鈍いから。」
「…鈍い?」
「瀬能は、俺の事信用してんの?それとも、ちょっとなめてんの?」
「な、なめてないけど。」
むしろ、自分の方がなめられていると思うのだが。
「俺が言ったこと、ちゃんと覚えてる?」
「え?」
「好き。って言ったよね。」
「……。」
確かに好きとは言われたが、何故それで怒られねばならないのかが分からない。
かと言って、下手なことを言って火に油を注ぎたくもなかった。
ぐるぐる考えていると、佐久間に肩を押され、ベッドに押し倒された。
「佐久間?」
「好きって言った意味、分かんない?」
「…意味?」
佐久間の好きの意味?
オレがなついてきたから、好き?
そういう感じだろうか。
そっと真上にある佐久間の顔を見ると、内心を見透かしそうな目が、遥に向けられていた。
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