背中だけ

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「瀬能、あーん。」 「…はぁ?何で今?」 遥が怪訝そうに、眉を寄せる。 …これのどこに、脈絡があると言うのか。 意図が全く掴めず、余計に混乱する。 無駄な問答をしても埒が明かない事は経験済なので、遥は諦めて小さく口を開いた。 「ほんと、いいコだね、瀬能。」 佐久間の口元に、笑みが浮かんだ。 「んむっ…!」 遥に与えられたのは、甘い菓子ではなく、佐久間の貪るような口付け。 なに?なに?なにっ!? 突然食い付いて来た佐久間に、何をされているのか分からず、目を白黒させる。 難なく佐久間に舌を絡め取られ、ビクリと背中を震わせる。 唇を触れ合わせるだけのキスすら知らない遥にとって、佐久間のキスはパニックを起こすには十分過ぎるくらいの衝撃だった。 「……んっ」 両手で佐久間を押し返そうとするが、それ以上の力で抱き寄せられる。 舌が絡み合う音が、静かな室内に響く。 息が、苦しい…。 佐久間の強い力に、抵抗も呼吸もままならない。 「…うっ…ん…」 苦しげに、遥が喘いだ。 遥の身体の力がくたりと抜けたタイミングで、佐久間がようやく唇を解放する。 「っはぁっ…はぁ…ごほ!ごほっ!…お前っ、はぁ、殺す気かっ!?」 薄い胸を忙しく上下させ、咳き込みながら、佐久間を睨む。 苦しさに浮かんだ涙で、視界がぼやけた。
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