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「駅前にできた新しいカフェの新作ケーキ奢るから!」
「し、新作ケーキ…」
魅惑的なフレーズについ頷きそうになる。
「お~!良かったな。あの店ずっと気になってたもんな、お前。一人で行くの恥ずかしいって言ってたしな?俺は甘いの苦手だから一緒に行くの嫌だし、ちょうど良いじゃん!」
「健吾、黙ってろ。」
冷たく言い放つ。
「お願い。瀬能。」
このままでは埒が明かない。
「はぁ…。分かった。じゃあ本当に後ろ姿だけだからな。」
「サンキュー瀬能。」
「ちゃんとしたの撮れなくても、オレに文句言うなよ。」
モデルの依頼は多々あれど、応じたことがないので経験は皆無だ。
「もちろん。」
迷惑顔の遥に、満面の笑みを向けてくる。
「おーい、瀬能!ちょっと!」
入り口付近から大声で呼ばれ、三人は同時に顔を上げた。
見ると、廊下側に席のある斉藤が、来い来いと遥を手招いている。
斉藤の隣には、見知らぬ男子生徒。
…またか。
「何?呼び出し?」
状況を察した佐久間が、遥の顔を覗きこんだ。
長いため息をつきながら手早く弁当を片して、重い腰を上げる。
「ごめん、佐久間。また後でな。」
「おー。よろしく。」
ヒラヒラと手を振って遥を見送った佐久間は、廊下に消えていく二人の姿を見つめた。
「高野、美人のため息って何であんなに悩ましげなんだろうな?」
「知るか。つーか、遥の前でそんなこと言ったら殴られるからな。」
「だから今言ったんだろ。なぁ、瀬能ってすげーモテるよな。」
「そう言う佐久間だって、モテモテだろ。」
「俺は女の子だけだし。瀬能なんて男女構わずじゃん。」
「それもあいつが嫌がる話題なんだけどな。曰く、殆どみんな顔目当てだから別に本当に好かれてる訳じゃない。ってさ。」
「ふーん。瀬能ってさ、綺麗な顔だとは思うけど、別段女顔って訳じゃないと思うんだけど。中性的ではあるかな。何がそんなに嫌なわけ?」
純粋な疑問をぶつけると、健吾が少し迷うようなそぶりを見せた。
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