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健吾は顎を何度も擦りながら、口を開く。
「あいつさ、今でこそ中性的?な感じだけど、チビの頃とかマジで美少女みたいな顔してたからさ。幼稚園の頃からずっとからかわれたり、絡まれたりしてたわけ。昔はそれで毎日のように泣いてたから、俺の中の小さい時のあいつの思い出って泣き顔しかない感じだな。でもまぁ、あいつも男だからさ、そういうのにすげー反発するようになって、目付きは悪くなるわ、口も悪くなるわで。まぁそのお陰で、一睨みで相手黙らせる術を会得したんだけどな。」
「ふーん。いつもの仏頂面と睨みは威嚇な訳ね。」
「そうそう。でも、その顔と言動のギャップにハマるヤツがいたりするんだよなー。佐久間みたいに。」
「あれ?分かる?」
あっさりと認めた佐久間に、健吾が苦笑した。
「最初はそうでもなかったくせに、途中からイキイキし出したからな。」
「いやー、よく見てんね。いいの?そんなヤツに幼馴染みの写真撮らせて。」
「あぁ、佐久間には、良い写真期待してるからな。お前の言う、良い雰囲気とやらを撮って、あいつの外見だけじゃない良さを本人に見せてさ、遥のコンプレックス軽くしてやってよ。」
健吾からの思いがけない要求に、佐久間の表情が固まった。
「え…。俺、背中しか撮影許可降りてないのに、任務重すぎじゃない?」
「ははっ、確かにな。そもそも、背中だけでいいもんなのか?」
「とりあえずはね。」
含みのある言い方をして、佐久間が笑う。
「じゃあ、任務続行で。」
「くそ。ひとつ聞いて良い?…そのさー、からかわれたり、絡まれたり?ってさ、セクハラ的な意味で?」
「まぁ……、ガキの頃は好きな子に意地悪したいみたいな感じだったけど。年を重ねればそれも変わってくるしな。もちろん、全部が全部そうじゃねーけど。単なるミーハーもいるし。」
「ふーん。じゃあ、瀬能が殴った美術部長は、どれに当てはまんの?それで瀬能、一週間部停止食らったよね?」
「……さぁ?」
「あれ?そこは教えてくんないの?」
「俺も殴られたくないし。自分で聞けよ。」
「えー。俺だって殴られたくない。でもまぁ、保護者の許可も頂いたし、いろいろ頑張ってみますかー。」
食べ終えたパンの袋を一つにまとめて、佐久間が大きく伸びをした。
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