207人が本棚に入れています
本棚に追加
コンコン。
ノックの音でハッと我に返った遥は、開けっ放しの扉の前に立つ佐久間の姿に首を傾げた。
「佐久間?」
「お疲れー。」
いつの間に皆帰ったのか、美術室には遥一人しか残っていない。
窓の外も仄かに暗くなっている。
「何か用?」
訝りながら問う。
佐久間は、遥の周りにはいないタイプで、考えていることがなかなか読めない。
それでも、自分とは正反対な性格であることは確かな気がした。
「いや?ちょっと話しに来ただけ。」
いつもの笑顔で、側に寄ってくる。
「話って、モデルの打ち合わせみたいなやつ?」
「そんな嫌そうな顔しないでよ。昼休みにも言ったけど、そんな堅苦しいやつじゃないからさ。俺が撮りたいなーって思った時に勝手に撮るから、瀬能は普通にしてて良いよ。」
「撮るとき、ちゃんと言えよ。」
「えー。言ったら瀬能固まるんじゃないの?そのまま自然体でいられる?」
「何も言わないで撮るのって、盗撮じゃん。」
「瀬能が許可してくれたら、盗撮じゃなくなるじゃん。背中だけだし、お願い。瀬能。」
「…やっぱり断れば良かった。」
つい、本音が漏れる。
「今更そんなこと言うの無し。それとも、男に二言があるの?」
「…ねーよ。」
最初のコメントを投稿しよう!