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神社の階段を駆け上った。いつもは誰もいない寂れた神社なのに、狐の面を頭につけた女子がいた。
「今日も来てくれたコン」
突然話しかけられた。俺は警戒する。とはいえ、俺には相手をしていられない事情があった。
俺の楽しみは街を見下ろしながらアイスを二本食べることだ。溶けないように必死で駆け上がったのに台無しになる。俺は無視して社の前の石段に腰掛けた。アイスを出す。相手も座った。
「君に伝えたい事があって、待ってたんだコン」
横目で見る。アイスを咥えた。溶け始めている。
「今日は特別で、あんまり時間もなくって……あのね、君のことね……いつもみてて……」
溶けたアイスが指を伝った。俺は慌ててなめた。
「あ、愛……す、好き」
どうやらアイスが欲しいらしい。仕方ないので袋から出して渡した。
「もう溶けかけてるし、やるよ」
「ありがと……コン」
受け取ったあと、なぜか泣き出しそうな顔をした。
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