この想いを伝えたくて。

2/2
26人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
 神社の階段を駆け上った。いつもは誰もいない寂れた神社なのに、狐の面を頭につけた女子がいた。 「今日も来てくれたコン」  突然話しかけられた。俺は警戒する。とはいえ、俺には相手をしていられない事情があった。  俺の楽しみは街を見下ろしながらアイスを二本食べることだ。溶けないように必死で駆け上がったのに台無しになる。俺は無視して社の前の石段に腰掛けた。アイスを出す。相手も座った。 「君に伝えたい事があって、待ってたんだコン」  横目で見る。アイスを咥えた。溶け始めている。 「今日は特別で、あんまり時間もなくって……あのね、君のことね……いつもみてて……」  溶けたアイスが指を伝った。俺は慌ててなめた。 「あ、愛……す、好き」  どうやらアイスが欲しいらしい。仕方ないので袋から出して渡した。 「もう溶けかけてるし、やるよ」 「ありがと……コン」  受け取ったあと、なぜか泣き出しそうな顔をした。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!