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ビプ男には、にわかにこんな話は信じられなかった。だいたい、自分にこんな能力が備わったこと自体も信じられないのに。こんな頭のいかれた団体が、おかしな計画を企んでいる。
「お前、俺たちが告発したら、両親は捕まっちまうんだぞ?」
「覚悟はしてる。」
少年の決意がその一言に滲んでいる。幼い少年の決意が。
こんなはずではなかった。
ビプ男は自分の幼少期を思い出していた。両親はそこそこ財産があり、教育熱心で全てのレールを敷き続けて、そのレールに息子を乗せて順風満帆に育てて、いずれは自分の事業を継がせる気でいた。堅苦しい毎日。1週間全てが習い事や塾で埋め尽くされていた。友達などいなかったし、空気も読むことができなかったので、できなかった。そして、ある日、爆発した。大学を卒業したら、親の会社に入社する予定だったのを親に黙って全く関係の無い会社の面接を受け、入社した。最初は親は烈火のごとく怒ったが、これも武者修行ということで俺を独立させたのだ。今に見ていろ、お前の会社など、俺が乗っ取ってやるからな。ビプ男は反骨精神で、入社した会社でがむしゃらに働いた。だが、本来、人の空気を読まず、好き勝手に自分の提案を通そうとするビプ男に、保守的な会社は冷たかった。合理的であるがゆえに、煙たがられるというのはよくある話だ。会社など、しがらみだらけなのだ。ビプ男は、そんな会社に愛想を尽かして辞めてしまったのだ。
「どっちにしても、俺は中途半端だ。」
結局、親の庇護がなければ何もできなかった。いまだに、親は自分の会社を継げとうるさく言ってくるのに、自分の中途半端さをまだ認められずにいたのだ。
「よし、協力してやる。俺もこんな所で死にたくはないからな。」
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