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「手荒なまねをして、申し訳ない。」
ちっとも悪びれる様子もなく、その男は言った。
言葉とは裏腹に、この男はきっと微塵もそんなことは思っていないと思う。目がそう言っていないのだ。
「あなたたちは、この崇高な計画に選ばれた人たちなんです。」
「それじゃあ、もっと丁重に扱えよ!」
ビプ男がかみついた。男は、片方の眉毛だけをピクリとつりあげ、
「じゃああなた方は、この崇高な計画の実験台になってくださいと申し上げて、はいそうですかと、快諾してくださるのですか?」
と笑う。
「誰が!この卑怯者のイカれカルト野郎!」
ビプ男が吼える。
「随分と酷い言われようですね。」
男は声を立てて笑った。ビプ男の怒りが頂点に達した。そして、炎が画面を襲う。
「乱暴はいけませんね。もっとも、それはただの画面。一応対策は講じています。防火ガラスで覆われていましてね。あなたの能力はもう把握済みですから。」
「乱暴なのはそっちだろ!」
俺は腹に据えかねて、とうとう罵倒の言葉を投げかけた。画面には教祖と思われる男、それにビプ男、ナナシ、俺の画像が4分割でモニターされている。
俺たちは、この施設で監視されているのだ。
「暴れないでくださいね。さもないと、催眠ガスで眠らせて、拘束しなくてはならなくなりますよ。ここは、もう諦めて、私達の崇高な実験にご協力ください。」
「あんた達、なんなんだ。」
冷静な声でナナシが問いかける。
「君達も知っての通り、巷でカルトと噂されている、「ESP研究会」。私は代表の三戸部です。
まぁ、カルトと呼ばれるのは心外なんですけどね。私達はまじめに人類の未来について考えている団体なんですよ。」
三戸部という男はそう語った。おそらくユウヤの父親だろう。
「拉致をする時点で、すでにカルトだろ。」
俺はあまりに腹が立って、三戸部を非難した。
「私達も、こんな乱暴なことはしたくありませんでした。ですが、兎角、こういった活動という物は弾圧を受け、常識とかけ離れていると排除されてしまう。私達に協力してくれる人など、いません。」
三戸部は大げさに溜息をつく。
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