1.お向かいののんちゃん

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 これまで、自慢じゃないが男の人と付き合ったことがない。彼氏いない歴=年齢だ。中学生の時から、何度か物好きな人に告白されたことはあるし、その中には、学年でも人気のある子からの告白もあったりして、友達から「あんなカッコイイ人から誘われて何で断るの?」と怒られたこともあった。けど、どうしてもよく知らない男の子と付き合いたいとは思えなかった。私にとって、男の子の基準は結局のんちゃんで、のんちゃん以上の人じゃ無いとカッコイイとは思えないんだろうな、と何となく納得してた。それは、のんちゃんが好きだって言うのとは違うと思っていたのだけれど…。  のんちゃんの大学の卒業式の日。春分の日で仕事がお休みだった私は、家でお洋服の衣替えをしていた。寒がりの私は、冬物を着ている時期が長くて、春を先取りなんてことは絶対にできない。本当に陽射しが暖かくなって、吹く風が心地よくなってくれないと、ウールのカーディガンが手放せないのだ。それでも、今年は春の来るのが早くて、桜も早く咲いたから、ウキウキしながらお洋服を入れ替えていた。  「やっと、このワンピースも着られるな。」  淡いピンクのストンとした丈が長めのこのワンピースは、最近ひと目惚れで買った物で、同系色のリボン付きのパンプスと合わせてお出かけに着ようと思っていた。何となくウキウキした気分だった私は、試しに着てみた。貧血気味で顔色のあまりよくない私でも、この服を着ると洋服の色が肌に映って少しは顔色がよく見える。食が細いせいでがりがりなのも目立たないし、やっぱり買ってよかったな、と1人ニコニコしていると、玄関のチャイムが鳴った。
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