乾日向は困っている

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なんなんだ、この子は。 奇想天外な言動に声を出せない。 この日からだ。 彼女……海野さんが毎日俺に話しかけてくるようになったのは。 おまけに十月の席替えで隣の席にまでなってしまった。 そうなると、一日中なにかと付き纏われ、憂鬱な毎日を送っていた。 「日向くん、実験頑張ろうね!!」 科学の従業での実験は席ごとにふたり一組で行うことになっている。 自動的に俺のペアは彼女になる。 いつもは自分がやるか相手が適当にやるかして、レポートを提出していた。 誰も俺と好き好んで一緒に実験をしたいという物好き女子はいなかった。……彼女を覗いて。 「あっ、あれ? これどうやるんだろう」 簡単な実験にも拘わらず、準備の段階から手こずっている様子。 呆れて深い溜息を漏らした瞬間、キンと鳴る耳鳴り。 一瞬にして見えたのは、少し先の嫌な未来の映像。 案の定、彼女が実験器具を落とし手を怪我するというものだった。
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