乾日向の憂鬱な一日のはじまり

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別に欲しいと思ったこともない。 昔からひとりが好きで、自分から進んでひとりになっている。 小学生のときも中学生のときもずっとそうだった。 ひとりの方がなにかと都合がいいし、変な気を遣うこともない。 高校生になっても今のスタイルを貫くつもりだった。……彼女と出会うまでは。 気分よく好きなアーティストの音楽を聞いていると、急に襲われる耳鳴りと頭に流れてくる情景。 足を止め、思わず深い溜息が漏れてしまった。 「勘弁してほしいな、毎朝懲りずに」 電柱の影に隠れ様子を窺うと、見えた通り前方から今日も懲りずにやって来た。 「あれー、さっき一瞬日向くんがいた気がするんだけどなぁ」 手を額に当てて周囲をキョロキョロ探す彼女は、同じクラスの海野 渚(うみの なぎさ)。 なぜか夏休みが明けてからというものの、彼女に付き纏われている。 「おい渚、どうせ学校行けば会えるんだから待ち伏せしなくてもいいだろ?」 そして現れたもうひとりの厄介者、彼女の双子の兄である海野 空(うみの そら)。 妹が可愛いのか、他クラスにも拘わらずなにかと彼女の世話を焼く人物だ。 「どうしてあんな一匹狼の奴に構うのか、俺には理解できないね」 俺も同感だ。 ひとりが好きでいるのだから、声をかけないで欲しい。
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