それはそれとして

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 お山の上には神さまがいるのよ、というお婆様の言葉を思い出していました。  すでに祖父母は亡く、父母を立て続けに失い、わたしは叔父に家を乗っ取られたのでした。そうして叔父は、邪魔になったわたしを山へと捨てました。  山で途方に暮れていたわたしの前に、白い大蛇が現れたのです。ああ、きっと、これがお婆様のおっしゃっていた神さまなのだと思いました。  失うものなどないわたしは、だから言いました。 「わたしの全てを捧げます。だから、」  それはそれとして世界はダムの底に沈みました。
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