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その時、電子ピアノの音が流れてきた。小さなステージの端っこにあった電子ピアノを誰かが弾いている。
(Let it be)だ。
なんて優しい歌声なんだろう。がちがちになっていた緊張が溶ける音が聞こえた。女神降臨!
いつのまにか、声が出ていた。電子ピアノの人も誘ってくれているように歌う。
主旋律を歌う私に、ハモってくれている。気持ちいい。
こんなに、気持ちいい ゙Let it be゛は、歌うのも聞くのも初めてかもしれない。
歌い終わったとき、オーナーの弟サマのママさんが拍手をしてくれた。
いつの間にか、店内にいる人たちも、拍手してくれている。
Jさんと、ゴリさんと、かわいこちゃん、以外。
『まあ、大丈夫なんじゃないの~。』
電子ピアノを弾いていた美声の女神が、そう言いながら近づいてきた。
『声もいいし、腹式もできてるし。ちゃんと練習すればねえ~。ゴリ、いじわるしないで教えてあげなさいよ~。この子、根性あるわよ~きっと。』
そう言いながら、私の顔をのぞきこむ。
もちろん、オカマ様です。
顔でかい・・・。
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