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= prologue =【記憶の扉が開く】
娘が眠ってくれた。
ようやく私の時間が来る。
大きく伸びをしたところに、電話が鳴った。
「はい」
『・・・なんで、アンタが出るのよ?』
いきなり、ごつい声に言われる。
「はあ?」
「・・はあって、cherryでしょ!アンタ、嫁に行ったんでしょ?」
ごついおっさんの声が、私の中でただ懐かしい響きに変わる。
「ゴリだね」
『何よ!すぐ気づかなかったの?ホント失礼なやつね!』
ちょっと、響きが優しくなった気がした。
「10年ぶりだよ。わかんないよ。」
『アンタ、嫁に行ったのに、なんで実家にいんのよ!わかったダンナの浮気が原因で、離婚して、出戻ってるんでしょ!』
ズボシだった。ゴリにはなんでもお見通しだ。
「元気なの?」
『当然でしょ!』
「カバも?」
懐かしすぎる日々が蘇ってくる。
私の人生の中で、24時間が一番短かった時代。
『カバは死んだわよ!』
ゴリは、『カバが寝坊した』というのと、同じくらい簡単に言った。
「なんで?」
『バッカじゃないの?オカマが早死にって言ったら、エイズに決まってるでしょ!3年前よ!まだ30代だったのよ!』
もっとずっと年上だと思っていたよ。
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