= prologue =【記憶の扉が開く】

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「なんで教えてくれなかったの?」 『電話したわよ、この番号に。カバはアンタに会いたいって言ったから。でもお母さまがアンタ結婚したって。番号教えてもらったけど、かけなかったのよ。』 「かけてくれたら良かったのに。」 『お宅の嫁に会いたがっているエイズで死にかけているオカマがいるなんて、言えるわけないじゃい! カバもそう言って笑ってたわよ。cherryが幸せならばよかったって、もういいって。』 そう、カバはいつも優しかった。いつも私の爪の手入れをしてくれていた。 ごめんカバ、また甘皮の手入れしてなかったよ。 「ゴリ、会いたいよ。カバのお墓参り行きたいよ。連れていってよ」 『悪いけど、一人で行って。カバのお墓は四天王寺の集団墓地よ!私は一緒に行けないわ。』 「なんでよ」 『次は、私が死ぬのよ。腹たつのよ。癌よ。』 ゴリは、昨日 飲みすぎたって言うみたいに言った。 「癌でも、死ぬって決まってないじゃん!」 『死ぬのよ、わかってるの!もう末期であと数週間じゃないの?だから電話したのよ。 アドレス帳から順番にかけて、アンタの実家になったってだけよ。 まさかいるとは思わなかったけどね。』 「里帰りで帰ってるだけとは、思わないのかよ?」 『実家でゆっくりしてる幸せな女が、そんな声ださないわよ。cherryのとびきり疲れてるときの声じゃない!』 ゴリには、なんでもお見通しだ。 15年前から。
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