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『ちょっと、ゴリ!』
ママさんが、さっきの奥のテーブルの人に声をかけた。
『・・イヤよ私!めんどくさい。』
彼(?)は新聞から目を離さずに答えた。
『うちで英語できるのは、あんただけなんだから、そんなこと言わない!兄さんを助けてやってよ。』
『ゴリ、たのむわ。わしも英語はあかんし。』
あかんのや、と思ってちょっと吹きそうになった時、ゴリと呼ばれた人がこちらを見た。
『あんたは、どうなのよ?やる気あるの?』
初めて正面からまっすぐに顔を見た。〈ゴリ〉さんなんだ。また吹きそうな気持ちを必死でこらえた。でも、この人、かなりオトコマエ。きっとモテるんじゃないかなあ、女性に。それがこの人にとって嬉しいことかどうかはわからないけど。
「彩さんみたいに、歌いたいです。」
もちろん、笑わずに答えた。真剣に答えた。
『ふ~ん』
なんとなく、しらけた空気が漂ってしまったみたい。
どうしようと思っているところに、助け舟みたいに誰かが店のドアを開けた。
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