一夏の幻影

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暑い。暑い。暑い。 暦の上では夏の終わりだと言うのに以前外は暑いまま。未だに蝉は残された時間をすり減らし鳴き叫ぶ。 最近の俺の趣味は変わっている。 近所の寂れた神社。参拝客なんて途絶えて久しいこの場所でアイスを食べて黄昏る事である。この良さの分かる人間は今の所現れない。強いて上げるなら此処に住み着くこの白い猫くらいだ。 そして… 「やあ、こんな暑い日にもご苦労な事だね。」 「好きで来てるんだ。別に構わんだろ。」 気が付いたら此処にいる謎の少女。弧の面を被っているので便宜上イナリと呼んでいる。 妙に神秘的な雰囲気を持っているが、初めて会った際にくれてやったアイスがいたく気に入ったらしく、こうしていると何処からともなく現れる。二三話をして、時間が経てば蜃気楼のように消えてしまう。 正直彼女が何者かなんて興味は無い。 熱い。熱い。熱い。 俺は今、この夏の季節に、茹だる様な恋をしている。
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