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「すごいな、蝉」
耳の奥に、唸る様にこだまする蝉の声。
今日を限りと謳い尽くす。
「わ、ありがと」
差し出したアイスを手に取る彼女が、もう自分を撫でてくれないと察したか、立ち上がった白猫が悠々と去って行く。
「今度は何キャラだ」
白髪ウィッグに赤眼コンタクト、とどめが狐面。
神社の境内でこの姿は罰当たりじゃないのか。
「ドジっ子神様見習い」
「好きだねえ、深夜アニメ」
「かわいいもん。好きなキャラになるのも好きだし」
「ふっきれたなあ、お前」
「だって」
それ以上の言葉は無い。
「恐竜と同じ滅び方するんだなあ、俺達」
二人して見上げる空は何時もと変わらぬ青空で。
それが見えなくなるのも後わずか。
「あ、あれだね。隕石」
指差す先を灼熱の光球が過ぎ去って行く。
それは幾つも。
やがて来る衝撃波と尚も降注ぐ隕石群。
選ばれた人は生き残るのだろうかと、最後に彼女を抱き締めながら俺は思った。
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