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「まったく、勇人の奴どこに行きやがった」
撮影会を拓也にやらせてさっさと教室から出て行った勇人を追いかけたのは数分後。
親衛隊や群がる生徒らに邪魔をされて教室を出た時にはもう何処にも姿がなかった。
うろうろと探し回るがなんせチャイナ服のままで色んな奴から声をかえられたり囲まれたりと面倒くさいことこの上ない。
「着替えた方がよかったか」
そうも思ったが更衣室から随分離れてしまっていて時間が勿体ない。
「ねえ、君オレらとお茶しない?」
後から声をかけられてうんざりしながらも振り返るとどこかで見たような生徒が三人ニヤニヤしながら海斗を値踏みしていた。
ねっとりした視線に不機嫌だった海斗の機嫌はますます悪くなっていく。
「・・・・」
「ねえ、あっちに美味しいケーキを出してる店があるんだ」
「そうそう、そこでオレらとお話しようよ」
「・・・・」
何も言わない海斗に三人はおとなしい奴だと勘違いしたのか、海斗の背中を押してそっちに連れて行こうとした。
海斗の背中を押した生徒が二人に目配せするのを海斗は見逃さなかった。
こいつら、何か企んでいるな。
文化祭で気が緩んでいる生徒を狙って襲ってくる輩が多いことを風紀委員である海斗の耳にも入っている。
ただ、警戒しても何処で誰がというまでは掴みきれないため手を焼いているのは確かだった。
このままこいつらに着いて行って仲間もろとも拘束するのはいいチャンスだ。
一瞬でそう考えておとなしく着いて行くことにした。
もちろん、GPSのスイッチをオンにして。
このGPSは特別で風紀委員や生徒会、保護対象者だけに渡されるもので一般生徒には秘密にされている。だからこの三人も見逃していた。
海斗が持っていたのはピアス型。気づかれる確率は低い。
スイッチをオンにすると風紀委員長に直接連絡が行くようになっている。
休憩中だった松本は舌打ちすると直ぐに走り出した。
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