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「仕方ないよミケ。クロの言うあの人は、クロのことを助けてくれた恩人なんだから」
薄汚れた灰色のビルの隙間、人間も来ない、陽の当たらないこの場所は、ノラ猫の彼らの住処。
ポリバケツの影から顔を覗かせたのはトラ
「いつでも、帰ってこいよ」
トラはそっとミケに寄り添い、クロに言った
あの人、あの人…あの人は、産まれたての僕が道端で雨に打たれて倒れているところを、助けてくれた。
まだ目も見えていない頃に母に捨てられ、冷たく打ち付ける雨水に、もうダメだ。と諦めた時のことだった
フワリと僕を包んだ暖かいタオルの感触は今でも忘れない
暖かくて、心地よくて、柔らかくて
あぁ…ここは天国だ。このまま眠ってしまおう
まだ何も見えない瞳に、重くなっていく瞼が被さる
『大丈夫?しっかりして、もう大丈夫だからね』
いい匂いがする
安心する、とっても、とっても……
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