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「でも、顔も名前も知らないのに…」
諦めきれんとばかりに、ミケが言った
「大丈夫、覚えてるんだ。」
あの匂い。あの、温もり
ミケとトラに背を向ける。ノラ猫の仲間達も次々と顔を出した。みんな、ありがとう、僕行くね。
細い細いビルの隙間を歩く
ヒョコリと顔を出した場所は、人間が歩く、街
いろんな匂いが邪魔をする、道行く人々に踏まれないようにピョコピョコ飛び跳ねる
「見てみて、あの黒猫かわいい」
人間が僕を指さして笑っている、ガラスの鏡に映った僕には、尖った耳や、長いヒゲ、真っ黒の毛が生えている
そう。僕は猫なんだ
猫だけど
もう1度、君に。もう1度、君に会って伝えたいんだ
だから旅に出た
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