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感情に左右されず理性で判断すれば、諦めることが最善だ。
わかっていたが、僕には持て余すモノがあることを認めざるおえなかった。
「ねぇ、聖。エリさぁ……、浮気されてるのかな?」
あれは中3の春。
好きな人と二人きりで帰ってる時だ。
「なんで?」
「今日も部活あるって言って一緒に帰ってくれなかったし」
俯いてトボトボと歩く絵梨菜。
校則違反ギリギリの茶髪はシュシュで一つに束ねている。
揺れる茶髪は夕日にあたって時おりキラキラと光る。
「気のせいだよ」
僕はうまく笑えなかった。
本当のことを知っているから。
「エリさ、聖がエリのこと好きなの知ってるよ?」
絵梨菜がとんでもないことを口にして足が止まる。
「はっ?好きなわけないじゃん。絵梨菜は利樹の彼女だから」
「誰の彼女でも好きになっちゃイケナイなんて法律ないじゃん。だから聖はエリのことが好きでしょ?」
見つめられれば鼓動は勝手に高鳴る。
うるさいくらい心臓が痛い。
生唾を飲む込むことでしか冷静になれない、いやそんなことしても冷静にはなれない。
絵梨菜が好きだ。
どうしようもなく好きなんだ。
なんでこんな感情……。
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