眠り姫とシェアハウス

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   彼女は優雅な動作で起き上がると、きょろきょろと辺りを見回した。  呪いの期限が過ぎ、止まっていた時がようやく動き出したのだ。  「あら?」  姫は周囲に誰もいないことに気づいた。  おかしいわね。  私を起こしてくれた王子様はどこ?  姫の疑問に答えてくれるものはいない。  ただ鳥たちが囀り、風がたおやかに草葉を揺らすのみ。  どうやら何か手違いが起きたらしい、と姫は悟った。  待ち望んだ王子のキスは、とうとうこなかったのだ。  「あーあ…がっかりだわ」  姫は気落ちしたまま、とりあえず家に帰ることにした。  「お父様とお母様、心配してるかしら」  姫は特に考えなく、森を歩く。  しかし彼女の直観力が優れているせいなのか、ほとんど道に迷わず森を抜けることができた。  彼女に備わった天性の才能の一つだった。
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