眠り姫とシェアハウス

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   「姫、ラーメン食べに行きませんか?」  なぜか敬語を使うようになったトサカが姫に言う。  「らーめん?それは何?」  「おい、姫がラーメン知ってる訳ないだろ」  メガネと呼ばれる男が、トサカをいさめる。    「姫ちゃん、ラーメンってのは庶民の食べ物だよ。まあ食べればわかると思うけど」  ピンクと呼ばれる女子が言う。  「なるほど、庶民の食べ物ね。ここに来てから奇妙なものばかり食べていたから、多少慣れたわ」    「じゃあ他のやつも呼ぶか」  メガネが携帯を素早くタッチする。    こうしてシェアハウスの住民が何人か集まり、姫をラーメン屋に連れて行くことになったのだった。  向かったのはラーメン屋のチェーン店。  ここならそこそこ清潔だし、頑固な店員と姫が喧嘩する、という事態も避けられるだろう。  「やはり薄汚い所ね。狭いし。庶民には相応しいけれど」  そう言いながら姫は、他の客が食べているラーメンに興味深々なようだった。  「…な、なかなか食欲をそそる香りね」  姫のそんな様子に、住民たちは笑いをこらえつつ、和まずにはいられなかった。
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