研究資料:零

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私が恋愛恐怖症になった原因は元恋人の事が忘れられない事が1番だと思っている。 年下だった彼だけど、結婚まで視野に入れて付き合ったのは私の中では最初だと思った。 今まで付き合ってきた恋人達も居たけど… 「彼に出会って、数年ぶりに真剣に恋が出来たんです…。」 石塚里美は涼汰との面談に来て、そう言った。 涼汰はただ相槌を打ちながら、ノートパソコンに打ち込む作業をしていた。 「彼の前に付き合っていた人は…その、束縛が酷かったし、私も若かったので…」 「それで?」 「その…私から別れを切り出しました。それから何度も連絡をし合って、身体の関係もあったんですけど。疲れちゃって…」 「そっか。」 視線を落としながら落ち着かない様子の里美を見て、涼汰は「少し休憩しようか。」と提案した。 里美は申し訳なさそうな表情をしながら「はい…」と答えた。 10分の休憩を入れて、再び面談を再開した。 「私、これから先ずっと1人で生きて1人で死んで行くのかなって思ってるんです。」 「…。」 「そう考えたら、親に申し訳なくて。でも恋愛が怖いんです。また捨てられるのかなって思ったら…人を好きになる事って本当に分からなくなってしまって。」 「うん。」 「でもまた恋がしてみたいなって。恋をしていた時って楽しかったと思うんです。それに…」 「?」 「それに…私だけまだズルズル引きずってるのってみっともないなって。」 「別にみっともないとは思わないけど。」 涼汰の一言に驚いた表情をした里美だが、「ありがとうございます。でも…今は借金返済の為に頑張って仕事に打ち込もうかと思えるようになりました。」と続けた。 「そっか。」 「はい。私なりに少し前に進まなきゃって思ったんです。思えるようになりました。」 「うん。」 「あ。もう時間ですね。」 「そうだね。じゃあ今日はここまで。また2週間後だね。」 「はい。ありがとうございます。」 「こちらこそありがとう。気を付けてね。」 「ありがとうございます。失礼します。」 面談室から里美が出て行き、「ふぅ…。」とため息をつき、涼汰も、ノートパソコンを持って面談室から出て研究室へと向かった。 2016年8月5日 研究資料:零 彼女は少しずつではあるが、自分から前に進もうとている。 恋愛恐怖症に対しては進歩は無いが、長い目で見ていこうと思う。 end.
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