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後ろから急かされるようにして鳴らされたクラクション。それとほぼ同時にフルスロットルかける。
急激なUターンをかけて反対車線へ飛び込み、車の群れを走り抜ける。
あまりの急スピードに浮きかけている前輪、轟音唸らせながら学校の敷地内へ飛び込んだ。
その瞬間、二人...いや三人視線を感じたが、そんなことはどうでもよかった。
急停止、グランドにサイドカーを停める。
砂煙がつむじ風のように舞い上がる。
ちょうど陽葵が昇降口から校舎内に入っていくのが見えた。
校内では若人たちが真剣に授業を受けている。
なんだか急に老いを感じた。
「ひまりーーー!!」
陽葵には届かない(聞こえないふりをしているのかもしれないが)。
授業中の学生達がグランドをのぞき込む。四階建ての校舎の窓から張り付くようにあちこちで顔が見える。
とにかく校舎の中に入るしかない。バイクをグランドに放置、昇降口へ向かう。
陽葵に何かあったら...俺は俺を許せない。
頭に血が上るなんて言葉がぴったりなほど頭が熱い。「おいこら!なんじゃお前、止まれ!」
二人の男が昇降口から歩いてくる。
教師だろうか。ひとりはジャージ姿で胸板の厚い屈強な男で、いかにも体育教師って感じだ。
もうひとりはスーツ姿で細身だが、その手には先がU字になった鉄製の棒が握られている。名前は思い出せないが、不審者とかを捕まえるために使うアレだ。
「あ?」
俺も相当キレていたのだろう。目が血走っていたかもしれない。俺の顔を見て二人の教師が後ずさる。
「そ、それ以上近づくようなら、ち...力づくで止めますよ!」
震えながら細身の男が言う。
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