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「俺は妹を迎えに来ただけだ」
普通に使えば愛らしい言葉も、この状況じゃ妄想誘拐かなにかに思われたかもしれない。
歩みを止めることなく進むと、
「うらあああぁぁぁ!!」
まず体育教師が叫びながら突進してきた。
俺はここに暴力をふるいに来たわけじゃない。
言ったとおり、迎えに来ただけだ。
大切な陽葵を...誰よりも愛している妹を。
体育教師の突進をスルリといなす。
「?!」
一瞬戸惑うも、もう一度襲いにかかる体育教師。
それも紙一重でかわし、離れ際に足を引っ掛けてやる。見事に引っ掛かった体育教師は盛大に転ぶ。
「うああああ!!!」
やけくそとばかりに猛進をしてくるスーツの男...U字の棒を振り回している。
おいおい、さすがにそれは!
「ちょ、それはその使い方で合ってんのか?!」
素人の動きほど危ないものはない。
「あぶっ!ちょっ!なっ!」
振り下ろされる鉄製の棒をギリギリでかわす。
さすがに当たったらただじゃ済まなそうだ。
ん?
振り上げられた鉄棒の先、屋上に陽葵の姿を捉えた。
「ひまっ...あ!」
イヤな予感ってのはいつの時代状況でも当たるものだ。
危険防止の鉄柵にのりかかる陽葵。
根元が腐っていたのかもしれない。壊れて落ちていく鉄柵...と陽葵
「あ」
抵抗することもなく落ちていく小さな体。
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