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部活帰りの夕暮れ時、巨大な団地群の影、人気のない規則正しく並んだ住宅街を見ると、ふとどこかに迷い込んだような気分になり、僕も不安を感じる事がある。Aもそんな根拠のない不安に捉えられているのかもしれない。
「おじさんや、おばさんには言ったのか?」
どう反応していいのかわからず、僕はそう尋ねるのが精一杯だった。
「話したよ。どうせくだらないホラー映画でも見たんだろで、終わり。」
何か解決策を示せればよかったのだが、僕にも何も思いつかなかった。気休めの言葉しか浮かばなくて、黙るしかなかった。
Aはジュースを飲み終えると、聞いてくれてありがとう、悪かったなと小さな声でいった。
店を出るとすっかり日が暮れていた。何を話すでもなくAと連れ立って団地へと足を向ける。
団地の入り口に差し掛かった時Aが、夢の中で誰かはここから入ってきて、中央の広場を抜けて、非常階段から上ってくるんだと説明した。Aの部屋は10階にある。普通なら階段を使って上るのは絶対嫌だ。15階建ての団地を見上げる。見慣れた風景だが、今日はのしかかってくるように感じた。
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