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その日、僕は夢を見た。
団地の入り口。誰かが歩いている。中央の広場を抜け、Aの部屋のある棟を通り過ぎ、僕の部屋がある棟の非常階段を上ってくる。僕の部屋のある11階の非常階段の扉を開けた所で目が覚めた。
全身に変な汗をかいている。僕はベッドに横たわったまま、目だけ動かし、部屋の様子を確認する。夜明け前。豆球が部屋の中を薄ぼんやりと照らしている。枕元の時計。秒針の音がやけに大きく聞こえる。
ちょっと待て。これはAの夢だろ。Aの夢じゃなかったのか?
昨日、Aと別れた時の背中の感触を思い出す。
心臓がどくんと鼓動した。
アレがAの部屋の前にたどり着くのはいつだったのだろう・・・この階に何部屋ある?Aの部屋は?そんなに親しくもないのに、なぜAは僕に夢の話をしたのか?
たどり着きたくない答えがちらつく。
自分の鼓動が耳元に大きく響いていた。
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