第2話「お人形と笑顔の練習。」

49/50
342人が本棚に入れています
本棚に追加
/414ページ
不安げな顔の杏君に向かって、俺は優しく微笑んだ。 「俺、杏君の友達になってもいいかな?杏君はかわいい後輩だし、やっぱり気にかけたくなるんだよな。あ、弟みたいな感じかな」 「……」 「杏君がもし1人になっても、俺は杏君を見捨てたりしないよ」 ぽんっと、軽く頭を叩いてニコッと笑う。 「俺がいるから大丈夫。杏君を1人にしないって、約束するよ」 「ーー…は…い…」 ぎこちない動きで杏君は頷いた。 杏君の表情に少しの安堵が感じられて、俺はホッとする。 …律斗君には、杏君に余計なことをするなって言われたけど…目の前で、杏君が辛そうにしているんだ。 ほっとけない。 「あ、それにさ、杏君には家族もいるだろ?だからさーー…あ」 家族の話を振ってしまって、後悔した。 何にも知らずに家族の話をするのは、まずかったかも…。 「…俺、母親がいないんです。小4の時に、事故で死んでるんで」 「っ…」 やっぱり! 「ご、ごめんな杏君!余計なこと聞いちゃって…」 「いえ、平気です。…父親も仕事が忙しくて、ほとんど家にいないんで、律といつも一緒に寝てます」 「そうなんだ…」 俺はそう呟いてから、ふと思い出す。 律斗君が金田をビンタした時のことを。 “死んだ人の悪口を言うな”
/414ページ

最初のコメントを投稿しよう!