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不安げな顔の杏君に向かって、俺は優しく微笑んだ。
「俺、杏君の友達になってもいいかな?杏君はかわいい後輩だし、やっぱり気にかけたくなるんだよな。あ、弟みたいな感じかな」
「……」
「杏君がもし1人になっても、俺は杏君を見捨てたりしないよ」
ぽんっと、軽く頭を叩いてニコッと笑う。
「俺がいるから大丈夫。杏君を1人にしないって、約束するよ」
「ーー…は…い…」
ぎこちない動きで杏君は頷いた。
杏君の表情に少しの安堵が感じられて、俺はホッとする。
…律斗君には、杏君に余計なことをするなって言われたけど…目の前で、杏君が辛そうにしているんだ。
ほっとけない。
「あ、それにさ、杏君には家族もいるだろ?だからさーー…あ」
家族の話を振ってしまって、後悔した。
何にも知らずに家族の話をするのは、まずかったかも…。
「…俺、母親がいないんです。小4の時に、事故で死んでるんで」
「っ…」
やっぱり!
「ご、ごめんな杏君!余計なこと聞いちゃって…」
「いえ、平気です。…父親も仕事が忙しくて、ほとんど家にいないんで、律といつも一緒に寝てます」
「そうなんだ…」
俺はそう呟いてから、ふと思い出す。
律斗君が金田をビンタした時のことを。
“死んだ人の悪口を言うな”
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