第2話「お人形と笑顔の練習。」

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あの時の律斗君は本気で怒っていた。 もしかすると、杏君の母親のことを思って、怒ったのかもしれない。 「…そっか。杏君にとって律斗君はとても大切な人なんだな。でも律斗君も杏君が大切なんだと思う。だから人形でいることをやめても、杏君を捨てたりしないよ」 「……」 「まぁ、俺が言っても説得力ないかもな。でも…杏君はやっぱり、笑っている方が魅力的だよ」 俺がそう言ってニコッと笑うと、杏君は瞳を見開いてジッと俺を見つめた。 「笑顔の方が杏君は輝ける。きっと周りの人たちも、そんな杏君に魅了されるだろうな、杏君は綺麗な顔してるしね」 「……褒めすぎですよ、先輩」 「あ、ごめん」 困って笑う俺から、杏君は視線をそらした。 何となく恥じらっているように見えて、可愛いなぁと思う。 「……先輩、もう一度、お願いしてもいいですか?」 「ん?」 「…笑顔の練習、お願いします」 「ああ、もちろん!」 杏君のその言葉に、俺は大きく頷いた。 第2話.end
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