340人が本棚に入れています
本棚に追加
/414ページ
あの時の律斗君は本気で怒っていた。
もしかすると、杏君の母親のことを思って、怒ったのかもしれない。
「…そっか。杏君にとって律斗君はとても大切な人なんだな。でも律斗君も杏君が大切なんだと思う。だから人形でいることをやめても、杏君を捨てたりしないよ」
「……」
「まぁ、俺が言っても説得力ないかもな。でも…杏君はやっぱり、笑っている方が魅力的だよ」
俺がそう言ってニコッと笑うと、杏君は瞳を見開いてジッと俺を見つめた。
「笑顔の方が杏君は輝ける。きっと周りの人たちも、そんな杏君に魅了されるだろうな、杏君は綺麗な顔してるしね」
「……褒めすぎですよ、先輩」
「あ、ごめん」
困って笑う俺から、杏君は視線をそらした。
何となく恥じらっているように見えて、可愛いなぁと思う。
「……先輩、もう一度、お願いしてもいいですか?」
「ん?」
「…笑顔の練習、お願いします」
「ああ、もちろん!」
杏君のその言葉に、俺は大きく頷いた。
第2話.end
最初のコメントを投稿しよう!