第3話「先輩と後輩」

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* * * 誰もいない階段の踊り場で、私はクマのぬいぐるみを腕に抱いたまま一息つく。 壁に寄りかかって、腕の中のぬいぐるみを見つめた。 「…このぬいぐるみ、かわいいな」 もふもふがたまらなく気持ちいいし、抱き心地もいいなぁ。 あ、でも駄目。このぬいぐるみは人質なんだから! あいつは今頃、このぬいぐるみを探しているはず。 彼女のぬいぐるみなのかな?でもでも!学校に持って来るくらい何だから、きっと大切なぬいぐるみなのよ! このぬいぐるみと交換条件に、圭也先輩に近づくなって言ってやるんだから! 「…でも、このぬいぐるみ欲しいかも」 どこで売ってるのかなぁ、買いに行きたい…。 ぎゅーっと抱きしめて頬が緩んでしまう自分に気づき、ハッとして慌てて首を振る。 ダメよ渡辺類!このぬいぐるみは人質なんだから! 「…さて、そろそろあいつを探しに行こうかな」 私は呟いて、壁から背中を離して階段を下りようとした。 その時ーーとんっと軽く誰かにぶつかった。 「っ、…え?」 人が近づいて来ていた気配を、まったく感じなかった…。 私はびっくりして目を見開き、体を硬直させる。 「みーつけた」 その冷たい声にゾッとして視線を上げると、私の目の前で八尋律斗が笑っていた。
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