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「っ、…うぅ…ぐす、…さいあくだ…圭也せんぱいの、あほ…っ!」
肩からずり落ちているシャツを握りしめ、火照った顔の律斗が鼻をすすって文句を言う。
目と頬は涙で濡れて、前髪は汗で額にはりついていた。
律斗の今にも崩れ落ちそうな体を、俺は後ろから支えてやりながら苦笑する。
「え~と…ちょっとやりすぎた。ごめんな?」
「ぜったいに許さないし…!てか、普段からポケットにゴムとか入れてんの?さすがに引くよ…」
「いやっ、今回はたまたまだって!チャンスがあれば学校で律斗を誘おうとか思ってなかったし!…あっ」
しまった、と口を塞いだけどもう遅い。
俺をギロッと睨みつけた律斗に、胸元を押されて突き放される。
「もう俺に触るの禁止!1週間近寄るなっ!」
「え~無理だって、律斗不足で死んじまうって」
「圭也先輩の性欲に付き合ってたら、俺の方が死んじゃうよ…!あ~もう、学校でヤるとかありえない最悪だ…、からだベタベタして気持ち悪いし…」
ぶつぶつ文句を言いながら、最後にネクタイを結び直す律斗を見つめて、俺は小さく笑った。
相変わらず、可愛げのない恋人だ。
ワガママで、素直じゃなくて、口が悪い。
…でもまぁ、そんな律斗だから好きなんだろうな。
俺ってかなりのドMだなぁ。
「…圭也先輩、何笑ってんの?ムカつく、俺、腰痛いんだけど、帰れないじゃん、どうにかしろ」
すっかり身なりを整えた律斗が、俺の頭をばしばし叩いてくる。
まるで不機嫌な猫にパンチをされているような気分になって、たまらず律斗をぎゅっと抱きしめた。
「ぎゃあっ」と律斗が色気のない悲鳴を上げる。
「~っ、触るの禁止って言ったじゃん!」
「…律斗、もう金田には関わるな。あいつお前に何するか分かんねーし、危険だ」
律斗の肩口に顔を埋めて、低い声で言う。
やっぱり不安は消えないし、金田に手を出されたことが悔しい。
「…まぁそうするけど。でも俺、いちおう写真部の部員だし、関わらないのは無理かもよ?」
「だったら戒に頼んで、金田の野郎をぶん殴って説教してもらう」
「え~、そこは圭也先輩がやろうよ」
「…もう二度と、律斗に手を出されたくない…。律斗の体に触っていいのは、俺だけだ」
「……」
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