341人が本棚に入れています
本棚に追加
/414ページ
俺は出入口に突っ立ったまま、杏を見つめる。
杏が俺の異変に気づいたのか、口を閉じると目を伏せた。
…ドアを開けた時、杏の横顔が見えた。
でも…なぜかその横顔が、『笑っていた』ように見えたんだ。
笑っていた?杏が?
俺以外の人間に、笑った顔を向けてたの?
ねぇなんで?
なんでだよ杏…。
「あれ、圭也とは一緒じゃないの?」
声が聞こえて、今度はそっちに目を向ける。
優しい笑みを浮かべていた戒先輩と、俺の目が合う。
瞬間、戒先輩がびくっと小さく体を震わせて息を呑んだ。
怯えたのかもしれない。
だって今の俺の目はーー
「…杏は、俺だけに笑っていれば、よかったのに…」
この先輩、やっぱり邪魔だったな…。
第1話.end
最初のコメントを投稿しよう!