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圭也が1年の子と保健室を出て行った。
残された俺は、とりあえずここで圭也たちが戻って来るのを待つことにする。
圭也があの1年の子に何かしないか、心配だな。
「…えーと、杏君。具合悪そうだけど、大丈夫?」
俺はベッドの上に居る杏君を見下ろして、にこりと笑みを浮かべた。
俺を見上げていた杏君は、視線を落とすと黙って頷く。
杏君とは、図書委員の仕事で何度か昼休みを一緒に過ごした。
まぁでも…杏君は無口だからなぁ、会話とかちゃんとしたことないけどな。
最初の頃なんて、無口すぎてこの子はもしかしたらしゃべれないのかな…?ってちょっと心配した。
それに、無表情な顔しか見たことない気がする…。
「えーと、寝不足とか?」
「……」
俺はとりあえず、笑顔のまま話しかけてみることにした。
圭也が帰って来るまで、無言のままはちょっとしんどい…。
「…猫が、苦手なんです」
ベッドの縁に腰掛けた俺の耳に、杏君の静かな声が聞こえた。
「え、猫?」
きょとんとして小首を傾げて杏君を見ると、杏君はまたすぐに俺から目をそらした。
目を合わせてくれないなぁ…。
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