第2話「お人形と笑顔の練習。」

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* * * 「ーー…」 「あ、起きた?」 カウンターに突っ伏して眠っていた杏君の目が、薄っすらと開いた。 隣に座って本を読んでいた俺は、身を起こしてぼんやりしている杏君に話しかける。 「まだねむいなら、寝てていいよ?」 「ーー…夢、か…」 「…?ははっ、夢を見てたんだね」 杏君が俺に視線を向けて、小首を傾げる。 まだぼんやりしている杏君に、俺はカフェオレを差し出した。 「飲む?もう冷たくないけどな」 「…いただきます」 俺の手からカフェオレを受け取った杏君から視線をそらして、俺はさっきまで読んでいた本に視線を落とした。 静かな図書室内に、しばらく沈黙が続いた。 「……杏君、あのさ」 「やっぱり、しません」 はっきりと聞こえた杏君のその言葉に驚いて、俺は隣に座っている杏君を見た。 「え…?」 「…笑顔の練習は、やっぱりしません」 「…どうして?」 俺が優しく問いかけると、杏君は唇をきゅっと引き結んで、俯いた。
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