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夜景
彼女とドライブデートで、市内にある夜景が綺麗なスポットに行った。
小高い丘の上から見る街並みは本当に綺麗で、彼女もうっとりと眺めている。
その時、視界がふいに真っ暗になった。
大規模な停電でも起きたのか、きらめいていた明りが総て消え、街は闇に包まれた。
怯えた彼女を気遣っていると、黒々とした夜の闇の中に幾つもの明りが灯り出した。
どうやら停電から復旧したらしい。そう思って安堵したが、よくよく見ると、最初に眺めた夜景と明りの配置や数が違う。
明り自体は街中に灯っているので、復興の時差のせいではないだろう。
だったらどうして最初と位置が違うのか。そう思った俺の脳裏に、先日、仕事で見せられた画像が甦った。
俺はこの春から不動産会社で働いているのだが、先日先輩が、市内の事故物件一覧を画像として見せてくれたのだ。
無機質な地図の上に赤い丸で記された夥しい事故物件。その位置と、今目にしている屋慶名明りの位置はまったく同じだった。
街の明りがどうしてそんな上に灯っているのか判らず、目をこすると、再び街並みは夜の闇に包まれた。そして数秒後、今度こそ最初に見たままの夜景に戻っていた。
その後、俺や彼女の身に何かおかしなことは起こってないし、不動産関係で世間を賑わせるニュースもなければ、地震などの災害も起きてはいない。
だからあの件は、どうしてあんなことが起きたのか、いまだに判らない状態だ。
ただ、改めて立体的に目撃すると、俺の住んでるこの街は、かなり事故物件の多い土地なんだなと思わされた。
仕事柄、嫌でもかかわることもあるので、せめてこれ以上そういう物件が増えないことを願おう。
夜景…完
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