「ただいま」が聞きたくて

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 休みの日、私は慶太の私物を処分する決意をした。  今日は私と慶太が付き合った記念日だ。  だから切ない、だけどきっかけにするは丁度いい。  もちろん佐々木さんに言われた一言も大きい。  クローゼットを開けると、今でもここに慶太が住んでそうなほどの服がある。  こんなにジーンズを置いてって。  大好きで集めてたくせに。 『このジーンズ達、オークションに出してやるから』  写真付きで慶太にメールでも送り付けてやろうかと思った。  もしかしたら、すっ飛んで帰ってくるかもしれない。  なわけないか。  それにしても、人の部屋を漁るのって気が引ける。  慶太の私物なんていじったことが無かったから。 「あ・・・・・・」  お菓子の缶ケースを開けてみると、中には写真が入っていた。  愛されてなかったわけじゃないんだ。  あぁ、私ってこんなに幸せそうに笑うんだ。  二人で分けっこしたカキ氷。  慶太、ちょっと日焼けしてるし。 「ダメだな・・・・・・」  写真はダメだ、捨てられない。  二年経っても慶太を思って零れてくる涙。  どうしていつまで経っても、私はこうなんだろう。  最後に大喧嘩をしたあの日、喧嘩のきっかけになったのは、私の一言だった。  結婚を早くしたかった私。  相手は慶太だと、私の中ではハッキリ決まっていた。  だけど真面目な慶太は、今の自分には結婚する器量がないと、結婚をする気が無かった。 「結婚する気が無いなら、付き合ってる意味なんて無いじゃない」  私の一言に、酷く傷ついた顔をした慶太。 「する気がないなんて言ってないだろ。まだタイミングが早すぎるって言ってるだけだよ」 「じゃあそのタイミングはいつ来るの?」 「それは・・・・・・」  言葉に詰まった慶太に、今度は私が酷く傷つけられた。 「いつまで経っても来ないよ、きっと。慶太の性格じゃ、一生私達結婚なんて出来ないんだよ」  今なら思う。  ただ一緒に生活していた時間がとても幸せだったと。  今なら分かる。  結婚はしたかったけれど、私には慶太と一緒に居られることの方が重要だったと。
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