「ただいま」が聞きたくて

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「違うよ、ごめんね。私忘れようとしても、慶太じゃないと無理だった」 「じゃあ今は彼氏居ないんだ?」 「居ないよ」 「てか、それでも彼氏作られてたのはショックなんだけど」  電話の向こうで慶太が笑った。 「でもな、俺のせい。俺がもっと早くアクション起こせばよかったんだから」 「ねぇ慶太ーー」 「もう少しだけ、もう少しだけ待って」 「・・・・・・何を?」  ガチャガチャと玄関の方で、鍵が開く音がした。 「ただいま」  少しだけ痩せた慶太。  私があげた服を着て、にっこり笑った。 「おかえり」 「ただいま・・・・・・」 「おかえりなさい。遅いよ、もう。」  泣いてる私に「ごめん」と言って抱きしめた慶太。 「ううん、ごめんね」 「結婚しようか、葵」  声をあげて泣いた私は、もう泣いてるんだか、笑ってるんだか、自分でも分からなかった。 「いいの?」 「そのために帰ってきたんだよ」  ずっと聞きたかった「ただいま」という言葉。  ずっと待ってた「結婚しよう」という言葉。  私は涙を拭いて、深呼吸をして、笑った。 「うん。おかえり」 ーーENDーー
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