4.この先は甘辛?

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「本当は前から知ってたんです、山口さんの事。他の店舗でもよく見かけたから」 今度は俺の心臓が跳ねる。 嬉しい。けど、やっぱ俺の顔? ミーハーな一面見ちゃったしな。 「よく通る元気な声と、ぴんと伸びた後ろ姿が印象的で。」 後ろ姿? 顔を上げない貴女。 「この間初めて貴方の顔を見たんです。真剣に頭を下げる貴方が素敵で。こんな人が恋人だったら幸せになれるかなって。でもやっぱり怖くて逃げて」 貴女が俺を見る。 「バカみたい。同じ轍は踏まないとあんなに誓ったのに。二度目の恋は賢くいこうと思ってたのに。歳上なのに、恥ずかしい」 貴女の目が、唇が、震える肩が。 全てが俺に向かっている。 ……カナさん。その続きは後で。 でないと、このまま押し倒しちまう。 タクシーが来た。 「ごめん、やっぱり今日は帰せないかも。ゆっくり聞かせてくださいね」 傘を少し傾けてそっと額にキスをする。 びくんと震えて下を向く花菜。 彼女を車に乗せ、すぐに自分も乗り込んで。 もう、逃がさないよ。 今夜は。 いや、今夜から。 心に貯まった悲しみを、俺に聞かせて。 全部受け止めるから。 全て出し切ったその後は。 改めて俺に恋して。 貴女しか見えない俺に。 貴女の二度目の恋は俺に下さい。 でも三度目はあげない。 いつまでも俺だけ。 俺だけに恋して。 完
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